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特集

vol.14「コロナ禍で母国へ帰れない人たちのいま…」シリーズ コロナ禍をこの地域で生きる

2020年10月1日から緩和された日本への入国制限措置。しかし、その一方で日本に来ている外国人が帰国できない。海外で暮らす日本人が日本への帰国を余儀なくされ、海外に戻れない。などの状況が続いています。

これからの不安を抱え、母国への想いを馳せつつも、いま日本でできることを模索する人たちの姿を取材しました。

母国へ帰ることのできない留学生

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愛知県刈谷市にある愛知教育大学。ここには留学期間を終えたいまも、母国へ帰ることのできない留学生がいます。タイからの留学生、ワリープットソーン・ワチラさん(23)です。

ワチラさんは、母国タイで通訳の仕事に就くために日本語を学ぼうと、1年前にやってきました。子どものころに日本のアニメやドラマを好きになり、日本語の発音の美しさに惹かれたといいます。「タイでは日本語の通訳の仕事は給料がいい」と、通訳を目指し日々大学で日本語を学んでいました。

バイトもできず授業もない。前に進めない日々

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しかし、留学期間が終わった2020年9月、日本とタイを結ぶ定期便がコロナ禍で運航を停止し、タイへ帰国できない状況に直面しました。

愛知教育大学国際企画課の稲垣匡人副課長は、「飛行機がとれないということで、日本での滞在が延長になっています。国の規制が緩和されつつありますが、先がみえない状況はいまだ続いています」と語ります。タイ大使館からのチャーター便はあるものの、通常のフライト以上のお金が必要になるため、タイの家族などへの負担も考えると難しいとワチラさんは話します。

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新型コロナの影響で、苦境に直面している外国人留学生。留学生の中には住む場所を失い、アルバイトもできないまま母国に帰れない人たちもいます。ワチラさんは大学の支援で現在も寮に住めているものの、アルバイトはビザの関係でできず、タイにいる母親からの仕送りで日々生活しています。

帰国したいです。バイトもできないし、授業もないし、前に進めている気がしません」とワチラさんは表情を曇らせます。

いま日本でできることを模索する

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日々不安が募るなか、ワチラさんの支えとなっているのは寮に住む学生たちです。現在、寮にはタイからの留学生、そして、留学生をサポートする日本人学生が共同生活を送っています。

例年は20人くらいいる留学生も、2020年は4月からの留学生が入国できなかったこともあり6人ほどしかいません。留学生をサポートする日本人学生の成田妃那さんは、現在の状況を寂しがりつつも「少人数だったからこそ一人ひとりの留学生に寄り添うことができた」と大変な状況だからこそ一緒に過ごし、支えたいという思いを語ってくれました。

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ワラチさんも、帰国の目途はたっていないものの、母国タイで日本語の通訳として活躍することを目標に、いまできることを模索しています。

そのひとつが、オンラインでの就職活動です。「コロナウイルスの影響で、オンラインで面接を行う企業が増えたので日本でも仕事を探せます」とワラチさん。就職活動を行うかたわら、仕事で必要とされる日本語などを覚え、自身の語学力をレベルアップさせたいと前向きな姿を見せてくれました。

夢への一歩を踏み出した矢先に...

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母国へ帰れない人だけではありません。新型コロナの影響で日本へ帰ってこざるを得なかった人もいます。日本国籍の母とペルー国籍の父を持つ大城優生さん(16)は、日本で生まれ、中学卒業と同時にペルーに渡り、ペルーサッカー1部リーグのウニベルシタリオ・デポルテスの下部組織の育成選手としてプレーしていました。

日本で高校へ進学することも考えていたという優生さんは、それを捨ててペルーに渡り、サッカー選手になるという夢に向け、大きな一歩を踏み出していました。しかし、2020年3月、ペルー国内でも新型コロナが猛威をふるいました。

日本に戻る苦渋の決断

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2020年10月現在、ペルーでの感染者は80万人を超え、死者も約3万2000人に上ります。ペルー国内に住む親戚を新型コロナにより亡くしたと話す優生さん。優生さん自身も約5カ月間、サッカーの練習はおろか、自宅から出ることもできなかったといいます。その後、両親の判断もあり日本へ戻るしかありませんでした。

こんなことになるとは思ってもいなかったので悔しいですね。たまにペルーでサッカーをプレーしている夢をみます」と優生さんは語ります。

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優生さんは、2020年7月に日本へ戻り、現在は、両親と姉、祖母の5人で暮らしています。

母親の大城ナオミさんは今回の優生さんの帰国について「いままで以上にペルー国内の治安が悪くなり、外に出るのが怖くなりました。息子は、目標をあきらめたくないから、ペルーに残りたいと言ったのですが、親としては一人でペルーに残すことはできず、一緒に日本に帰ってきました」と複雑な心境を語ります。

嘆くだけでなく今でできることを

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それでも優生さんは、嘆くだけでなく今でできることを探そうと、知立団地を中心に活動するサッカーチームで再びサッカーを始めました。チームを運営する山中クリスチアノさんは、「優生さんが加入し、チームのレベルもアップもしたし、本人もプレーを楽しんでいていいですね」と笑顔を見せます。

ペルーには戻りたいと願う優生さんも「いまは日本で挑戦しながら頑張っていきたいと思います」と前向きな姿を見せます。

コロナ禍で、どれだけ大変な困難に直面しても、いま日本でできることはなにかと模索する人たち。しかし、彼らが日本を飛び立つまで、まだまだ時間がかかりそうです。

(取材・撮影:上西 将寛/文:石川玲子/2020年10月取材)

「シリーズ・コロナ禍をこの地域で生きる」は、キャッチの番組でも放送中!

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番組名:特集「地域の今」

地域で今起きていること、取り組み、人々の姿を深掘り。「シリーズ・ コロナ禍をこの地域で生きる」では、医療・教育、企業などに従事するこの地域の人々の声から、コロナ禍の時代をどう生きるのか、そのヒントを探ります。

詳しくは、KATCH番組紹介ページ・特集「地域の今」をご覧ください。

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