micro_ichiranyou_dai2.jpg
特集

Vol.27「続・コロナ禍で母国へ帰れない人たちのいま…」シリーズ コロナ禍をこの地域で生きる

2020年9月、私たちは新型コロナの影響で母国に帰ることができない留学生と、海外から日本へ帰ってこざるを得なかった2人の青年の姿を取材しました。日本国籍の母とペルー国籍の父を持つ大城優生さん(16)と、タイから愛知教育大学に留学していたワリープットソーン・ワチラさん(23)です。

前回の取材から5カ月。これからの不安を抱え、母国や異国への想いを馳せつつも、いまできることを模索する2人のその後を追いました。

夢への一歩を踏み出した矢先に...

feature27_01.jpg

日本国籍の母とペルー国籍の父を持つ大城優生さんは、日本生まれの16歳。中学卒業と同時にペルーに渡りプロサッカーチームの下部組織のテストに見事合格。育成選手としてプレーしていました。

しかし、プロへの一歩を踏み出した矢先にペルーでも新型コロナが...。約4か月にわたり自宅での自粛生活を強いられました。両親の判断もあり日本へ戻るしかありませんでした。「日本での高校進学の道も捨ててペルーに行ったのですが、それが上手くいかなくて。いますぐにでもペルーに戻りたいです」と2020年9月の取材時には本音を漏らしていました。

気持ちを切りかえ日本でできることを

feature27_02.jpg

前回の取材から5カ月...。現在は、午前中からコンビニでアルバイトをし、午後はサッカーの練習などをしているといいます。また春からは通信制高校に通う予定とのこと。

そんななかこの5カ月で大城さんには大きな環境の変化が。刈谷市を拠点にする市民サッカークラブ「FC刈谷」が2021年春から立ち上げるユースチームに所属することが決まったのです。「トップチームに上がるチャンスがあるため、そこを逃したくないです。来シーズンにはJFL(日本フットボールリーグ)でプレーしたいと思います」と大城さん。

市民サッカークラブ「FC刈谷」

feature27_03.jpg

FC刈谷U-18の桑原剛監督は、「彼がここに来るまでの事情も聞いています。プレーヤーとしても魅力的ですし、彼自身がトップチームでプレーしたいという夢を持っています。ペルーから帰国した後はサッカーをする場所もなかったということなので、ここでプレーしつつ上を目指してもらうために入団することになりました」と語ります。

5カ月前はペルーに戻りたいと話していた大城さんですが、現在は日本で頑張っていきたいという気持ちが強くなっているといいます。「コロナに立ち向かってきた自分ならば、これから大変なことがあっても夢に向かっていけると思う」と前向きに現在の心境を語ってくれました。

母国に帰れず、時が止まっていた留学生

feature27_04.jpg

刈谷市井ケ谷町にある愛知教育大学。ここで2020年9月に出会ったのがタイからの留学生、ワリープットソーン・ワチラさん(23)です。

ワチラさんは母国タイで通訳の仕事に就くために日本語を学ぼうと愛教大へやってきました。去年9月に留学を終え帰国する予定でしたが、日本とタイを結ぶ定期便がコロナ禍で運航を停止し帰国できていない状況が続いていました。

feature27_05.jpg

5カ月前、ワチラさんは「私が買った飛行機のチケットは、フライトがキャンセルになりました。帰国したいですが帰国もできず、自分の人生が止まってしまったように感じます」と語っていました。

新型コロナの影響で苦境に立たされる留学生たち。留学生の中には住む場所を失い、在留資格が切れてアルバイトもできないまま、母国に帰れない人たちもいます。ワチラさんは大学の支援で寮に住めているものの、帰国できない状況に日々不安を募らせていました。

コロナ禍でも特別な経験を得た留学生活

feature27_06.jpg

母国に帰れない期間が続くなか、ワチラさんの心の支えとなっていたのは同じ寮に住む学生たちでした。

ワチラさんたちと同じ寮で暮らしながら留学生のサポートをする日本人チューターの成田妃那さんは、「コロナ禍で日本人も閉塞感のある日々が続くなか、それ以上に留学生たちは肩身の狭い思いをしていると感じています。そのため、コロナ禍でも安全に出かけられる場所を選んで留学生と出かけています」と話してくれました。

ワチラさんは「最初留学した時はただ勉強をしにいくだけかなと思っていましたが、思った以上に特別な経験をたくさんさせてもらいました」と笑顔を見せてくれました。

コロナ禍でも得られたものを大切にしたい

feature27_08.jpg

2020年12月下旬、ワチラさんが帰国する日が決まりました。やっとの思いで取れた飛行機は、ワチラさんの在留資格が切れる2週間前の便でした。

大学の寮では、感染症対策のため密にならないように気をつけながらのお別れ会が開かれていました。お別れ会に出席していた日本人チューターの有村仁哉さんは「コロナのせいで新しい留学生が日本に来られなくなってしまい新しい出会いがなくなってしまったと思っていましたが、逆にコロナのおかげで少ない留学生とより深い関係を築くことができました」とワチラさんとの思い出を振り返ります。

feature27_09.jpg

日本でともに暮らした仲間たちに見送られながら母国タイに帰っていったワチラさん。帰国後の様子をテレビ電話越しに訊ねてみると「現在(2021年1月)、タイ国内では新型コロナの影響は悪化していて、夜間外出などの措置が行われています。でもタイに帰ってきて、ようやく自分の道を進むことができるようになり嬉しいです」と、無事に帰国できた喜びを語ってくれました。

「なんでも通訳できるような人になりたいです」と希望を語るワチラさん。新型コロナにより翻弄された2人の青年は、コロナ禍で得た経験を糧に新たな一歩を踏み出しています。

(取材・撮影:上西 将寛/文:石川玲子/2021年1月取材)

「シリーズ・コロナ禍をこの地域で生きる」は、キャッチの番組でも放送中!

feature01_06.jpg

番組名:特集「地域の今」

地域で今起きていること、取り組み、人々の姿を深掘り。「シリーズ・ コロナ禍をこの地域で生きる」では、医療・教育、企業などに従事するこの地域の人々の声から、コロナ禍の時代をどう生きるのか、そのヒントを探ります。

詳しくは、KATCH番組紹介ページ・特集「地域の今」をご覧ください。

関連記事