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特集

Vol.46「自粛期間を来年の準備に。三河一色大提灯まつりの灯を絶やすな」シリーズ コロナ禍をこの地域で生きる

新型コロナの影響で、全国各地の多くの祭りが2年連続の中止・規模縮小に追い込まれています。どの祭りも関係者が危惧するのは、コロナ後の地域伝統の継承についてです。

そんななか、愛知県西尾市で毎年8月下旬に開催される「三河一色大提灯まつり」も新型コロナの影響で2年連続の中止が決定しましたが、苦境の中にあっても町の人々は来年の開催を目指し準備を怠りません。今回は、祭りに関わる人々の姿から、伝統の灯を絶やすまいと奮闘する祭人の想いを伝えます。

2年連続中止となった大提灯まつり

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愛知県西尾市の南西部に位置する一色町。三河湾に面したうなぎ養殖などが盛んな町です。そんな一色町の三河一色諏訪神社で毎年8月下旬に開催されるのが「三河一色大提灯まつり」です。圧巻の大提灯が6組12張境内に掲げられ、夏の終わりを告げる西三河の風物詩として、毎年一色町の夜を彩ってきました。

しかし、新型コロナの影響により祭りは2年連続中止に...。それでも祭りに関わる人たちからは、「祭りがないと寂しいですが、来年はぜひやりたいです」、「大提灯は掲げられないが、雛形提灯と呼ぶ小型の提灯の奉納だけはやります」など、苦境の中にあっても祭りへの想いは消えていません。

三河一色大提灯まつりの起源

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そもそも三河一色大提灯まつりは、どういった祭りなのか。一色地域文化広場「一色学びの館」の学芸員、山形康太さんに祭りの起源について伺いました。

「いまから450年前に三河湾から魔物が現れて田畑を荒らしていたといいます。困った村人たちが諏訪神社の神前で大かがり火をたくと、魔物が現れなかったことが祭りのはじまりです。やがて大かがり火が提灯へと形を変え、6つの町内が大きさや美しさを競い合い、現在の形になったといわれています。また和紙で作られた大提灯には神話や歴史上の出来事が描かれていて、大きいものは直径5.6m、高さ10mにもなります。贅を尽くした大提灯はいつの時代も町の人々の誇りです」

祭りが中止になった影響は...

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2年連続祭りが中止となったことで、町の人々は不安を感じています。
「提灯や柱の準備など伝統的作業の継承が途絶えるかもしれない」、「2年空くことで担い手の代がかわり、父から子に技の継承ができるかが心配」などの声が聞こえてきます。

また祭り中止の影響は祭人だけではありません。大提灯を象った「もなか」が人気の和菓子店「半田屋」の店主、鈴木貴博さんは「祭り中止により観光客が来ず、売上がかなり落ち込みました。また、祭りがないと商店街の活気がなくなるというのを、まざまざと感じました」と話します。

祭り中止により、地域に住む人々がそれぞれの立場で町の未来を懸念していました。

土用干しと祭人の思い

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2021年8月1日。祭りでの大提灯のお披露目はなくなりましたが、諏訪神社の氏子たちによる提灯の「土用干し」が行われました。諏訪神社の境内で天日干しをして湿気を取り除き、虫やカビから提灯を守ります。

町の皆が思いを寄せる自慢の大提灯。天日干しの間も骨組みのヒノキや表面の和紙に傷みがないか入念に調べます。

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大提灯を干し終えると、氏子の一人は「こういった提灯は他の地域にはありませんから、やっぱり日本一だと思っています」と誇らしげに提灯を見上げていました。

また、一色大提灯保存会の村松康信会長は、「昭和20年の終戦の年に中止した以来、ずっと祭りを続けてきました。2021年もなんとか祭りができないか思案しましたが、断念するしかなく、とても寂しいです」と胸中を語ってくれました。

祭りを未来につなぐために

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そんななか、土用干しを特別な想いで見つめる男性がいました。一色大提灯保存会の前会長の大野義重さんです。

一色大提灯まつりは、2018年まで8月26日と27日に行われるのが慣例でした。しかし、この2日間が平日にあたった場合、仕事や学業の都合で若い世代の参加が減り、このままでは祭りの継承や維持が困難になるおそれがありました。そこで2019年、大野さんは祭りを未来につなぐため開催日を休日の土曜と日曜にしようと働きかけました。

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当時について大野さんは「大変だったのは、日にちを変えることに抵抗を感じるお年寄りが多かったことです。一方で、これまで通りの日程でやっていると祭りが衰退してしまうという声もありました。祭りを担う世代の人の休みに合わせた方が参加してもらえる。そのほうが、これからも継続するのにいいのではないかと思って活動していました」と振り返ります。

祭りの日にちを変えた結果、2019年は、若い世代や子どもたちが大勢参加し盛況のうちに幕を閉じたといいます。すべては、祭りの伝統を重んじ、祭りを未来に繋ぐためです。

祭人たちの想いがある限り伝統の灯は続く

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盛況に終わった2019年以後、新型コロナの影響で2年連続の中止となった大提灯まつり。それでも大野さんは、今後はさらに参加者を増やしたいと、一色の観光地巡りと合わせた宿泊ツアーも考えていると話します。「今年できないのは仕方がない。悲観的に考えても先には進めません。我々が祭りを守り、若い人たちがその姿を見て、祭りへの誇りが持てるようにすることが私たちの役割だと思っています」

三河一色大提灯まつりでは、祭りに関わる全ての人が、来年の開催を信じて、今できることに取り組んでいます。自粛期間を来年の準備に、祭人たちの想いがある限り、伝統の灯は絶えることはありません。(取材・撮影:映像舎/文:石川玲子/2021年8月取材)

三河一色大提灯まつり

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8月下旬に三河一色諏訪神社で行われる愛知県西尾市一色町の夏の風物詩。約450年もの歴史を持つ由緒ある祭りで、期間中に境内に掲げられる全長6~10メートルの巨大な提灯6組12張は、かつて海の魔物を鎮めるために焚かれたかがり火が起源といわれ、大迫力で一色の夏の夜を彩ります。

開催場所:三河一色諏訪神社(愛知県西尾市一色町一色宮添129)
※2021年の開催は,新型コロナ感染拡大防止のため中止となりました。

三河一色大提灯まつり 紹介ページ(西尾市観光協会ホームページ)

【近所のはなし関連記事】
三河一色大提灯まつりの大提灯が鎮座!愛知県西尾市「一色学びの館」で過ごす学びの休日

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番組名:特集「地域の今」

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