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特集

Vol.48「知立山車文楽の伝統を未来に繋ぐ~山町人形連・祭人たちの想い~」シリーズ コロナ禍をこの地域で生きる

2021年9月5日にパティオ池鯉鮒で開催された山町人形連結成45周年記念公演「文楽人形と共に」。知立まつりなどで上演される愛知県知立市の伝統芸能「山車文楽」の演目が披露されました。しかし、新型コロナにより知立が誇る伝統芸能に大きな危機が訪れています。今回は地域の伝統芸能を未来へ繋げようと奮闘する祭人たちの想いに迫ります。

全国で唯一山車の上で披露する「知立山車文楽」

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三人の人形遣いが一体の人形を巧みに操り、義太夫と呼ばれる語りと三味線の演奏に合わせて様々な物語を演じる「文楽」。この文楽を全国で唯一、山車の上で披露するのが「知立山車文楽」です。

江戸時代から大切に受け継がる山車文楽は、現在愛知県知立市の4つの町で受け継がれ、5月に開催される知立まつり本祭で上演奉納されます。毎回、祭りに訪れた多くの人々を魅了し、2016年にはユネスコ無形文化遺産にも登録されました。

しかし、知立まつりは新型コロナの影響で2年連続の中止に...。上演の機会が失われた知立山車文楽にいま大きな危機が訪れています。

知立まつり(知立市ホームページ)

コロナ禍で思うようにできない練習

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現在の状況について、山車文楽を受け継ぐ町の一つである山町人形連の三浦康司会長に伺うと、「山車文楽にとって、本来は祭りがメインの催しです。これまでは祭りがあったので、1年に10回くらい公演ができていました。

しかし新型コロナの影響により、できなくなっています。通常であれば祭りのために、しっかりと練習するのですが、それすらできない。担い手たちの意識も文楽から離れていきますし、練習に集中する時間も取れなくなっている状態です」と話してくれました。

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山町人形連で人形遣いを務める大幡清さんは、「公演自体が減り、練習の回数が少なくなることで、どうしても人形を動かす感覚を忘れてしまうのが難しいところです」と話します。

また、練習の時間を設けても、思うように人数が揃わず、人形の足を動かす人がいなかったり、物語を語る義太夫がいなかったりなど、本番と同じような練習ができないといいます。

いまできることを精一杯やろう

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上演する機会がない、練習も思うようにできない...。伝統の担い手たちに訪れた危機。しかし、山町人形連の三浦会長は、かつて山車文楽は同じような危機に直面し、それを乗り越えてきたと話します。

「山車文楽は、太平洋戦争や伊勢湾台風の影響で祭礼がと中止となった後、昭和後期にかけ一時衰退の危機を迎えました。理由は後継者不足。しかし、地元の伝統を絶やしてはいけないと思い、当時20代だった私たちを中心に町の長老たちに文楽を教えてもらい受け継いできました。その時に結成したのが、この山町人形連です。だからこそ、祭りが中止となっても、いまできることをと精一杯やろうと考えています。

開催を決めた記念公演

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そんな想いから開催を決めたのが、山町人形連の結成45周年を記念した単独公演です。これまで知立まつり以外では、文楽を受け継ぐ他の町と一緒に公演を行うことがほとんどでしたが、大規模な公演開催が難しいいま、いまできることをと単独公演開催を決めました。

当初は2020年に開催を予定していましたが感染状況をみて延期に、そして感染症対策などを徹底した上で2021年9月に開催することとなりました。 様々に工夫を凝らしてでも公演を開催しようと踏み切ったのには、山町人形連のメンバーの地元の伝統を守りたいという想いがあります。

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人形遣いの大幡さんは、「やっぱり今後の後継者の不安があります。人数が少なくなってしまうと、上演できる演目も限られます。でも公演を行うことで色々な人に見て頂き、100人に1人でも興味をもって後継者になってくれたら」と話します。

三浦会長も「こんな時期だけど、多くの人たちに知立の文楽を見てもらい、少しでも地元にこんな伝統があるんだということを感じてもらえたら」と公演に向けた想いを語ります。

徹底した感染症対策のなか行われた公演

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こうして2021年9月5日にパティオ池鯉鮒で開催された「山町人形連結成45周年記念公演『文楽人形と共に』」。受付では検温と手指消毒、会場は定員の50%と、徹底した感染症対策が行われ、公演では「寿式三番叟」、「艶容女舞衣・三勝半七酒屋の段」、「日高川入相花王・渡し場の段」の3演目が上演されました。

公演に訪れていたお客さんは「初めて見たのですが、伝統と文化が継承されているのだなと思い、感動しました」、「一体の人形の動きや表情に引き込まれました。人形であそこまでの表現ができるのは、素晴らしいと思いました」と感想を話してくれました。

伝統を未来へ繋ぐために歩み続ける

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無事、成功に終わった記念公演。公演を終えた人形遣いの大幡さんは「お客さんが楽しんでいる顔をみて、一人でも再び文楽を見てみたいと思ってもらえれば嬉しいです」と話してくれました。そして三浦会長も「山町人形連含め、知立の山車文楽はこれからどんどん世代が変わっていきます。だからこそ後継者を作って、これまで以上に盛り上げていってほしいですね。知立の伝統文化ですから、絶えさせてはいけないと思っています」と語ってくれました。

新型コロナにより再び訪れた知立の伝統芸能の危機に立ち向かう山町人形連は、「山車文楽」を未来へ繋ぐために歩みを続けます。 (取材・撮影:ビデオハウス/文:石川玲子/2021年9月取材)

知立山車文楽

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江戸時代より続く知立の伝統芸能。文楽を、山車の上で上演するのは全国でも知立だけ。 現在は、知立まつり本祭で山町・中新町・本町・宝町の4台の山車の上で文楽が上演されていて、2016年には「知立のからくり」とともにユネスコ無形文化遺産に登録されています。

知立まつり(知立市ホームページ)

「シリーズ・コロナ禍をこの地域で生きる」は、キャッチの番組でも放送中!

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番組名:特集「地域の今」

地域で今起きていること、取り組み、人々の姿を深掘り。「シリーズ・ コロナ禍をこの地域で生きる」では、医療・教育、企業などに従事するこの地域の人々の声から、コロナ禍の時代をどう生きるのか、そのヒントを探ります。

詳しくは、KATCH番組紹介ページ・特集「地域の今」をご覧ください。

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